※2021.05.25追記
EVERING事業をMTGからスピンオフ(独立)させ単独で上場を目指すようです。単独で上場して十分な資金を調達することができましたら、EVERINGのサービスが継続する可能性も上がりますし外部投資家が入って透明性が上がれば、利用者としても安心感が増すでしょう。セキュリティやプライバシーへのプレッシャーが増加します。
ここから元記事
EVERING(エブリング)とは指輪型のNFC決済に対応したデバイスで、国内では株式会社MTGの子会社であるEVERING株式会社が発売元です。イギリスではMcLEAR(マクレア)として2018年から発売されているもので、物自体はある程度成熟が進んでいるもののようです。現時点で黒色のみ販売されていますが、下記画像の通り白色もラインナップされていますので、その内発売されると思います。
読み方を”イブリング”だと思い込んでてて誤表記してたのでこっそり修正しました・・・
EVERINGを指に嵌めて決済端末にかざすとVISAのタッチ決済が利用でき、物理カードやスマートフォンなしで買い物を済ますことができるようになります。クレジットカードをEVERINGに紐付けチャージすることで決済が可能になり、チャージや決済機能のロック/ロック解除等の操作はスマートフォンアプリ上から行います。
2020年に日本発売予定でしたので、約一年発売が遅れました(認証を受けるのに時間がかかったよう)が、やっと国内でまともな決済デバイスが利用できるようになります。私も新しいものは好きなので予約注文を済ませましたので、実機が届いたら改めてレビューする予定ですが、とりあえず現時点で公表されている情報をまとめていきます。
※記事執筆時点で一部サイズは在庫切れですが、まだ予約注文は可能です。
※5月18日に売り切れたようです。後ほど通常の予約等が解禁されると思いますので、欲しい方はチェックしておきましょう!私のツイッターでもアップデート情報を呟いていきます。
メリット
充電不要
個人的に最大のメリットだと思う点がこれです。ウェアラブルデバイスは毎日充電が必要なものが大半ですが、EVERINGは一切不要なので全く心配せずに使うことができます。
高機能にするのではなくNFCのみに特化することで充電不要を実現しているので、EVERINGに高機能を求めるのはお門違いだと個人的には思います。
生活防水
5気圧防水に対応しているので、手洗いや料理をする際でも着けたままで大丈夫です。5気圧ですのでお風呂やプールは駄目ですが・・・。
5つの国際ブランドに対応
紐付けることができるクレジットカードはVISA/mastercard/JCB/AMEX/Dinersの5社に対応していますので、事実上ほぼ全ての国内発行カードを利用できることになります。
JCBやAMEXが使えない店舗でも、EVERINGを用いることで間接的に決済できるようになります。
スマートロックに対応予定など拡張性への期待
現状ではVISAのタッチ決済機能のみですが、将来的にはスマートロックへの対応や公共交通機関の乗車への利用など、拡張されることが示唆されています。実際にスマートロックの解錠に使っているデモ動画があるので、意外と夏頃には対応しているかもしれません。
デメリット
有効期限4年
EVERINGは実質的にVISAのプリペイドカードですので、有効期限が定められています。これはVISAのルール上、仕方がないことですがユーザーとしては残念な点です。現時点で日本国内における4年経過後の再購入時の価格等は公表されていませんが、イギリスでは継続ユーザー向けに格安料金の買い替えプランが用意されています。
100万円利用した時点で次のEVERINGへ
上述の有効期限4年と同様にVISAのルール上、100万円を超えてチャージすることはできません。100万円を超えた場合は新しいEVERINGが送られてくるとのことですが、有償なのか無償なのかについては不明です。
価格
セラミックでできた指輪型のNFCタグとして考えると、19,800円という値付けは高く感じる方が多いと思います。イギリスでは、£89.99≒約13,900円で売られているのを考えると、ちょっぴりプレ値感がありますね。15,000円を切ってくるともう少し買いやすくなりそうです。
セキュリティへの懸念
VISAの決済機能ではセキュリティ対策が行われているので、基本的に大丈夫だと思いますが、将来的にスマートロックとして利用していく場合はセキュリティ上の懸念があるかもしれません。
NFCリングのUID(スマートロック等の機器がリングを識別するための固有番号)が適切にランダマイズされておらず、容易に特定できる為、悪意を持った第三者が複製することができるという指摘があります。メーカー側が適切にランダムな番号を振り分けていれば防げるのと、(スマートロック解錠で使う場合は)パスワード入力と併用することでリスクを大幅に下げることができるとのことですので、大きな問題ではないと思いますが。
IoT化が急速に進んでいく中で、ユーザーは「メーカーのセキュリティ意識が適切であるか?」というのを一つ気にしていくべきだと思います。
In the case of the NFC Ring, while convenient, it clearly does not provide the same level of security to consumers as a physical key. This decrease in security model from a physical key to a NFC Ring is not due to technology limitations but due to an insecure design.
https://www.mcafee.com/blogs/other-blogs/mcafee-labs/the-cloning-of-the-ring-who-can-unlock-your-door/
悩ましい(一長一短ある)点
チャージ式
やはり、チャージ式のプリペイドカード方式であることは悩ましい点です。
例えば、三井住友カードナンバーレスのようにカード本体(もしくはApple Pay)でタッチ決済を行ったらコンビニやファストフード店で5%還元になるカードだと、EVERINGを使うと損してしまうことになります。一方で、JCBやAMEX等のVISA以外のカードをVISAのタッチ決済で使いたいケース(例えばVISA/masterしか使えない「やよい軒」や「サイゼリヤ」など)では、非常に有用な国際ブランドロンダリングのツールとなり得ます。
意外とJCB等がチャージできるプリペイドカードは少ないですし、各カード会社がEVERINGへのチャージ時のポイント付与をどうするかで話は変わってきますが、チャージ時にポイントが付与されればかなり良い選択肢です。このように一長一短ありますが、使い方次第でなんとでもなりそうではあります。
アプリの使い勝手
イギリスでの実績もありますしそんなに心配していませんが、現時点でアプリの仕様が公開されていないので未知数な点があります。アプリでEVERINGの決済機能をオンオフしたり、複数カードを登録してチャージすることができるというのは公開されていますが、「何枚まで登録できるのか?」「チャージの最低金額はいくらなのか?」「3DSecureは必須なのか?」などなど疑問点は尽きない訳です。
発売日に速攻で手に入れたい訳ではない方は、夏まで様子見でも良いかもしれません。
まとめ
待望の指輪型決済端末であるEVERINGが先行予約開始されたということで書いてきましたが、今から手元に来るのがとても楽しみです。どのカードを紐付けるべきか等々、考えることが多数ありますが、こういった人目を引くデバイスが登場することで、NFC Payment(タッチ決済)の認知度が広がっていくのが一番嬉しい点です。
VISAがやっとApple Payに対応したニュースが想像以上に話題になっていましたが、最大手であるVISAが消費者に歩み寄ってくれたことでタッチ決済の普及は加速度的に進むと思います。あとは、タッチ決済を使いたい時に決済端末によって「クレジットカードでお願いします」と言うべきなのか、それとも「タッチ(NFC)決済でお願いします」と言うべきなのか、消費者の知識が問われる現状が是正されることを願うばかりです。